「学習とは習慣だ」と、うちの塾長が四谷大塚の父母講演会で話したのは、今から20年ほど前のことだ。
それを聞いた保護者が一瞬どよめいたそうだ。
「学習」と「習慣」が結びつかなかったのだろう。
現在では、多くの人が「学習とは習慣だ」と認識しているようだ。
ところで、習慣といって、一番わかりやすいのは歯みがきだ。
私の子の場合は歯が生える前から、シリコン製の歯ブラシをカミカミさせて、歯ブラシに慣れさせた。
歯が生え始めた頃は指をガーゼで巻いて歯をこすった。
仰向けに寝かせ、口を開けさせて磨いた。
この時期がおそらく一番大変だった。
子供からしたら、口を開けているのも大変だろうし、口の中に歯ブラシが入ってくる違和感、真剣な顔をして口の中を覗き込む親の顔、すべてが気持ちのいいものではないはず。
だから、例外なくうちの子も泣いて嫌がった。
しかたなく、横になった子供の腕の上に自分の足をのせ、その足の間に子どもを固定して歯みがきをした。
目にいっぱい涙をためていた顔は今でも忘れられない。
子供が泣き叫ぶからと言って、歯みがきをしない親はいないだろう。
だって、放っておいたら虫歯になるから。
虫歯になることのリスクを親はよく知っているから、なんとか磨こうとする。
そうやって、長い歯みがき親子バトルの末に子どもは歯みがきの習慣を身につけるのである。
学習も同じだ。
学習をしないリスクも親はよく知っているはずだ。
でも、子どもは学習しないリスクを知らない。
したがって、習慣づくまでは嫌がることが多いし、時間もかかる。
それでも毎日学習し、学習習慣が身についてくれば、必ず学習成果となって現われてくる。
それまでは歯みがきと同様に、保護者あるいは周りの人が、子どもの学習できる環境を整えなければならない。
子供が大きくなると、その分だけ習慣づけは幼い時より大変だ。
できれば幼いときに身につけさせたいが、そうできなかったとしても、諦めることなく習慣づけていきたいものだ。