今でもよく思い出すことがある。
以前、中学生の一人が質問しに塾に来たときのことだ。
来る途中で、たまたま塾の友だちと出会い、そのまま2人一緒に来ることになった。
質問をしている間、一緒に来た子に塾長が「待っている間にこれでも解いたら?」と言って1枚のプリントを渡した。
その子はうれしそうにそのプリントに向かい始めた。
質問が終わったあと、授業に来るまでに〇付けをするからと言って、そのプリントを塾長が預かった。
2人が帰って、そのプリントの〇付けを始めた塾長が話をしてくれた。
その問題はかなり難しい応用問題で、解法はこれから授業で扱うつもりだったそうなのだが、待っている間、解き方をいろいろと考えておけばいいと思って出題したそうだ。
しかし、その子はその問題を基礎の組み合わせだけで解いてしまったのだ。
解法がわかっていればアッという間に解けるけれど、その方法を知らないその子はたくさんの式を書き、問題を解いていた。
そのたくさんの式を見ながら、「すごく回り道しているけれど、基本に忠実に解いている。
基礎がしっかりしている子はやっぱりどんな問題でも解けるな」とつぶやいていたことを昨日のことのように覚えている。
基礎がしっかりできていれば、それだけでも解けるし、そのうえで解法を知れば、最強だ。
その子はその後、都立国立高校に合格することになる。
かなり以前の話なので、塾長はその時にどんな問題を出したのか、覚えていないそうだ。
私はその時の感心した塾長の顔と、びっしりと式の書かれた大きな〇のついたプリントを覚えているのに。
基礎基本。毎日シリーズの問題もそればかり。
しかも、毎日毎日採点されて返却される。
通信教育でもふつう返却は月に1回なのに。
こんな塾はめったにないと自負している。
×がたくさんつく画像が送られると、落ち込むこともあるだろう。
でも、それをどうやって解くのかを考え、試してみる。
その時間が生徒たちの理解を深め、基礎が身につく時だと思っている。
学校のテストの×は成績に影響するけれど、その前段階の練習なのだから×がついたら、解き直せばいいだけなのだ。
学校のテストで〇がつくために、練習しているのだから、×がついていい。
塾のパンフにも「×(バツ)の数だけ伸びていく」と書いてある。
バツのついた問題を確実に解けるようにすることが、実力をつける一番の近道なのだ。